Deros Island
2021/粘土、兄との会話、ドローイング
exhibition:ユゥキユキ×平山匠 二人展「三すくみんぐ」/元映画館


「ぼくは画家、おとうとは彫刻家」と、兄はロボットの設計者のような口ぶりでよく話しかけるようになった。

 ふと画家と彫刻家の違いについて考えた。両者の大きな違いは、絵を描くことと立体で何かをつくることだと思った。けれど、絵は画面の世界の中で立体物を描くことができるし、彫刻は絵の世界を実現させることだってできる。一見違っていたとしても、それは区別をしていただけで、違いじゃないかもしれない。”違い”と”区別”を誤解しないことが大切だ。視点を変えて、僕は分断している二つの世界をつなぎ合わせたい。

 チェコを代表する芸術家の兄弟カレル・チャペックとヨゼフ・チャペック。カレルの戯曲の代表作『R.U.R-ロボット-』。タイトルのなずけ親はヨゼフだ。彼らはお互いに影響を与え合って作品をつくり上げたという。もし「画家と彫刻家」二つの力が合わさった時、理想的な作品が生まれるかもしれない。お互いがお互いを補い合い、三人目の芸術家のロボットをつくったらどうだろう? もしかしたら、しがらみのない世界の救世主になり得るかもしれない。分断された二つの世界を一つにするそんな物語が必要だ。とても難しいかもしれないけれど...。

 「僕のシナリオはどうだろう?」と、兄にロボットの発明家のような口ぶりでよく話しかけるようになった。

ユゥキユキ×平山匠 二人展「三すくみんぐ」
ユゥキと平山はどちらも、しかし異なる方法で、「2者関係」をモチーフとしてきた。ユゥキは前作において、自らが囚われている共依存的な「母/娘」関係のなかに「男装コスプレどうしのBL」を挿入することで、閉ざされた2者関係の解体を試みた。一方平山は、自閉症の兄が創作した物語を彫刻化することによって、2者関係の本質的な理解を追求した。それぞれが抱える2者関係をめぐって、別々の方向へ歩んでいたふたりが、図らずも共に「3すくみ=3者関係」へと辿り着き、ひとつの展覧会を作ることになった。前作で2者関係の愛情、性愛を解体しようとしたユゥキは、「生殖」の問題へと歩みを進め、種としての人間を相対化する「3者関係による生殖」という思考実験に踏み込んでゆく。前作では、兄が創作した物語を原作としたインスタレーションを展開していた平山は、カレル・チャペック、ヨゼフ・チャペック兄弟によるSF小説『R・U・R』にインスパイアされ、ロボットを生み出す兄弟(兄/ロボット/弟)の物語を創作する。ゆきづまった2者関係の向こう側に、異なる視点から描かれた3者関係が現れる。